東京医科大学 2024年一般入試の分析と2025年入試に向けての対策について

東京医科大学 2024年一般入試の分析と2025年入試に向けての対策について

皆さん,こんにちは!医学部特訓塾代表の本田です。東京医科大学の2024年の入試を分析しました。その上で,2025年入試合格に向けて、受験生の皆さんがどのような対策をすべきかについて論じて参ります。今回の分析に関しては,医学部特訓塾塾長でもあり医学部特訓塾数学科主任の小柏裕義先生と,医学部特訓塾英語科主任の池谷悠先生のご協力を得て作成しております。東京医科大学キャンパスは新宿にあり、医学部特訓塾がある阿佐ヶ谷からも地理的に非常に近いこともあり、医学部特訓塾から毎年進学者を輩出しております。

目次

1.東京医科大学の難易度について

1.1競争率など過去3年の入試状況

2 2024年入試問題総評

2.1 英語

(1)試験時間や問題形式

(2)大問1:文法問題

(3)大問2:語句整序問題

(4)大問3:長文読解問題

(5)大問4:長文読解問題

2.2 数学

(1)大問1:小問集合

(2)大問2:場合の数

(3)大問3:空間図形

(4)大問4:ベータ関数の積分

2.3  化学

(1)第1:小問集合(正誤問題)

(2)第2:中和とpH

(3)第3:その場で考える問題

(4)第4:有機化学

2.4  物理

2.5  生物

3 新課程入試についての考察

1 東京医科大学の難易度について

東京医科大学は,医学部特訓塾から最も近い私立大学医学部の1つで,毎年進学者を輩出しています。毎年入塾してくる塾生に人気校です。新宿という好立地であること,学費が私立大学医学部の中では比較的低めであることなども人気を支える要因であると考えられます。

1.1競争率など過去3年の入試状況

以下,募集人数,志願者数,合格者数,競争倍率など,東京医科大学の一般入試に関する客観的データを集計いたしました。

2024年2023年2022年
募集人数74名79名79名
志願者数2797名2537名2173名
一次試験合格者数417名430名423名
正規合格者数128名133名119名
補欠候補者数193名186名223名
繰り上げ合格者数65名46名126名
総合格者数193名179名245名
入学者数74名79名79名
最終合格倍率13.012.87.9

東京医科大学では,2022年から毎年志願者数が増えていることがお分かりになるかと思います。実際に2023年には364名の増加,2024年にはさらに260名の増加となっており,わずか2年で約30%も志願者数が増加しております。志願者数が増加しているということは,競争倍率が年々上昇しているということに他なりません。実際に2022年の最終合格倍率が7.9倍だったのに対し,2023年で12.8倍,2024年では13.0倍と随分と競争倍率が上がっています。

なお,一次試験合格者数,正規合格者数は2023年で増え,2024年で減っておりますが,医学部入試では補欠合格や繰上り合格の数が多いので,これはさほど気にするべき数字ではありません。むしろ,繰上げ合格数が2022年では126名もいたのに対し,補欠候補者数も2022年より少なかった2023年,2024年で繰上げ合格数が約半数(46名,65)となっていることからも,東京医科大学に合格した受験生の中で,そのまま入学手続きを希望する割合が3年前とは異なり,この2年間で急上昇したことが分かります。受験生の東京医科大学に対する人気が上昇したことがよく分かります。

募集定員と入学者数が一致しているのは,補欠の繰上げ合格を出す際に,1名ずつしっかりと入学の意思を確認しながら作業ができていることを意味しており,4月ギリギリになっても入学者数が確定できない不人気な状況ではないことがこのことからも分かります。

不正入試問題発覚以降,東京医科大学の難易度は一時的に下がっていましたが,上記の表を分析し,2023年,2024年の動向を確認すると,すでに東京医科大学は,私立大学医学部の中で,最難関校の一翼を担う医学部に復帰したことが分かりますね。

東京医科大学では,学費が大幅に下げられる予定であると言われておりますので,今後さらに難易度が上昇することが予想されます。

2 2024年入試問題総評

2024年の東京医科大学の試験問題は,英語は易しめ,数学・化学は標準的,物理・生物はやや難しめという出題でした。これは他大学にも言えることですが,コロナ禍以降,化学の入試問題それまで以前と比べて解きやすくなり,努力が正当に報われる出題となっていることから,英語・数学・化学をしっかりと得点源にできるように勉強しておくことが重要です。理科2科目を同時に解答させられる場合,化学にしかりと時間を割り振ってきっちりと点数を取りきることが合格への近道であると言えるでしょう。

2.1 英語

(1)試験時間や問題形式

東京医科大学の英語の試験時間は60分。配点は100点です。マーク式プラス最後に1題だけ和訳の記述問題という出題で,2022年までは5つの大問でしたが,2023年からは,4つの大問から構成されるようになりました。大問1が文法問題,大問2が語句整序,大問3と大問4が長文問題という形式です。

東京医科大学の英語の試験問題は,ここ3年連続でやや易化傾向にあります。ただし,今後,以前の難易度に戻る可能性も十分あるので,油断し過ぎず,2021年度以前のものにも挑戦しておくことが望ましいでしょう。

 

(2)大問1:文法問題

大問1は一昨年まではアクセント問題でしたが,昨年度,今年度と文法の選択問題となりました。やや難易度の高い表現もありますが,標準的な出題です。文法の理屈で選ぶものよりも,語彙の知識問題や表現問題が多い傾向です。

 

(3)大問2:語句整序問題

大問2は語句整序問題です。否定にまつわる表現が,2023年度,2024年度で共通して出題されています。どちらも典型的なフレーズの出題ですから落とせません。

また,大問1,大問2に共通して,副詞に関する表現が出題されており,普段の勉強からこの辺をしっかりと注意しておきたいところです。

 

(4)大問3:長文読解問題

大問3は読解問題です。内容一致,内容不一致,空所補充,同義語・対義語など,さまざまな出題がされています。これまで語数が900語ほどの出題だったものから,ここ数年で600700語程度と短くなっています。新聞記事からの出題が続いており,内容がやや具体的なので,苦手な人はしっかりと練習しておくことが必要です。

 

(4)大問4:長文読解問題

大問4は読解問題です。数年前までは1000語前後の長文でしたが,2024年度には600語程度にまで減少しました。2018年度は24個の選択肢から6個の正しい選択肢(問題文と内容が一致している選択肢)を選ぶという非常にハードな作業が求められていました。これは以前の東京医科大学の英語の試験では非常に特徴的な受験生を悩ませる出題だったのですが,2024年度には12個の選択肢から4個の正しい選択肢を選ばせるというように,作業量も激減しました。これによって東京医科大学の過去問をやり込んできた受験生にとっては,「例年に比べて非常に易化した」と感じたのではないかと思われます。ただし,選択肢が本文中に根拠となる部分の出現順と一致していないため,共通テストのような,前から順に読めば良い,という出題にばかり慣れていると面喰うかもしれません。しかし,これは前年の問題でもそのような出題であったので,過去問研究をしっかりとしていれば,特に問題なく対処できたと思われます。また,同意語選択や和訳(記述)も出題されています。同意語選択は,やや難しい語句も出題されるので,前後の文脈から推測する必要もあります。

東京医科大学の英語長文の話題としては,

・コロナ禍関連 ・テレメディスン(遠隔地医療) ・海洋プラスチック汚染 ・肥満について

など,医療系および社会問題関連が出題が多い傾向にあります。

2.2 数学

東京医科大学の数学の試験時間は60分。配点は100点です。共通テストと同様な,マーク式の解答を求められます。大問は4つで,2019年以降続く形式です。難易度は昨年度に比べて,全体的に取り組みやすい問題構成でした。制限時間が60分なので,基本問題が多いとはいえ,焦らずに正確に解ける計算力が必要です。また,大問を前から順番に解いていくと,大問2で躓く可能性があるので,東京医科大学合格に向けては,問題を取捨選択できる選定眼を過去問を解きこんで身に着けてほしい。他の科目次第ですが,数学は75%が合格ラインでしょう。

(1)大問1:小問集合

大問1は小問集合です。小問それぞれが別々のテーマから出題されていて,各問題は独立しています。

小問1は,「n進法で表された循環小数」

小問2は,「部分分数分解する数列の和」

小問3は,「極形式(偏角の性質とド・モアブルの定理)」

小問4は,「逆関数の微分」

いずれも教科書の基本レベルの出題で,過去問をしっかりとやっていれば,取り組みやすい出題でした。合格ラインを突破するには,計算ミスすることなく,大問1では満点を狙わなければならないと思います。

(2)大問2:場合の数

大問2は「場合の数」からの出題で,「円に内接する正36角形の頂点から点を選び,四角形の数を求める」問題でした。小問が3つに分かれ,小問1が「正方形」,小問2が「長方形」,小問3が「もとの図形の2辺を共有する四角形」という出題です。頂点を選び,いろいろな「三角形」を求める問題であれば経験したことのある受験生が多いと思いますが,設問の全てが「四角形」なので当惑した人が多かったと思われます。それでも小問1の「正方形」は考えやすいので解けた人も多いと思いますが,小問2や小問3に手を出してしまうと時間を費やし過ぎてしまう可能性が高く,場合の数が得意でない限り,すぐに見切りをつけて大問3や大問4に時間をかけるべきだったと思います。

(3)大問3:空間図形

大問3は「空間図形」の出題で,「球」に関する問題でした。小問が4つあり,どの小問も典型問題なのでどれだけ解き慣れているか?で差がつく大問でした。合格点を越えるためには大問3が完答できることは必要条件だったと考えます。

(4)大問4:ベータ関数の積分

大問4は「ベータ関数の積分」で小問が4つです。

小問1では「4次関数がx軸と2本の接線で接することから関数を特定する」という作業で基本的な動作が求められています。

小問2では「定積分の部分積分」

小問3では「ベータ関数の積分」

小問4では「回転体の体積」

と,前の設問が次の問題への丁寧な誘導となっていることに気付けば,ベータ関数の問題に慣れていなくても完答出来たのではないかと思います。ただし,東京医科大学レベルの大学に本気で合格したいのであればベータ関数の取り扱いに慣れておく程度は必須条件であると思われます。

2.3 化学

東京医科大学の理科は2科目120分で200点の配点です。理科が得意な受験生にとっては,理科の配点が高いので東京医科大学は狙い目です。マーク式で選択肢から答えを選ぶ形式です 。難易度は標準的でしたが,今年度は,第3問の処理次第で大きな差がついたように感じられます。化学は努力が報われやすい出題ですので,東京医科大学合格のためには,化学を得点源にしようという意識をもって勉強すると良いと思います。

  • 1問:小問集合(正誤問題)

1問では,新課程から登場する「吸熱反応なのに反応が自然に進行するのはエントロピーの増大が原因である」などという内容がいきなり出題されていて面食らった受験生が多かったのではないかと思いますが,それ以外は標準的な正誤問題です。

(新課程については後述します)

(2)第2:中和とpH

2問は,中和滴定と電離平衡の標準的な問題でした。中和点を越えて滴定が進行した場合のpHなど,専門の予備校の授業を受けず,単に標準的な問題集をやっているだけではなかなか身に付けられないけれども,典型化しておかなければならない内容もありました。医学部特訓塾では何度も扱ってきた問題なので,塾生は特に問題なく通過できたと思います。

東京医科大学では,このように単に標準的な問題集を1冊しっかりやっただけでは解けないような問題が出題されることもありますので,東京医科大学合格に向けては,私たちのような医学部専門予備校を頼ることも大きな意味があると思われます。

(3)第3問:その場で考える問題

3問は近年の東京医科大学の化学の試験問題にしては珍しい内容の出題でした。その場で問題文に書かれている実験を理解し,問題用紙の余白などにメモを取りながら,問題文の実験を丁寧に追えれば正解できる,そんな問題でした。けれども,この問題に正面から向き合うとかなり時間を食ってしまうため,できればいったん飛ばして次の大問をやってから戻るべき問題でした。この問題の処理を誤るともう一科目の理科にも悪い影響が出てしまったのではないかと思います。

(4)第4問:有機化学

4問の有機化学はある程度の学力があれば楽勝だったと思います。単に知識の暗記にとどまらず,異性体の書き出しや構造決定の問題をたくさん解きこんでおくことが重要です。

2.4 生物

マーク式の出題です。難易度は難しめです。
過去3年間,大問が3問だったのですが,今年は大問が4問に増えましたが,小問の数の合計はほぼ同じであったため,分量としては例年とほぼ同じです。難易度も昨年とほぼ同じです。

時間に対し分量が多いので,読み取り速度を早めつつグラフや図のデータを丁寧に分析する力が要求される出題であったと思われます。

2.5 物理

マーク式の出題です。 難易度は,ここ数年,すごく易しかったのと比べ,難しめな出題でした。
問題数が多く,誘導が少なかったり,計算量が多かったりと高得点が難しい出題でした。問題の取捨選択が上手にできれば6割くらい取れるでしょうが,実際の試験場では5割を切っても仕方ないかも知れません。


3 新課程入試に関する考察

旧課程入試であるはずの2024年入試ですが,化学の第1問で「エントロピー」に関する出題がありました。このことから考えると,2025年の入試では,東京医科大学の入試に関しては,共通テストのような旧課程学習者に対する配慮を持った出題はされないかもしれないという覚悟で,移行措置を当てにせず,しっかりと新課程内容を勉強しておく必要があります。熱化学は特に大きな変化がありますから対策は十分にされていると思いますが,その他にも「元素の周期表」が旧課程と新課程では微妙に違ったり,物質の三態では,旧課程にはなかった「凝華」などの用語をしっかりと押さえておかなければなりません。

また,「分配平衡」や「キレート滴定」,「比旋光度」,「ギブズエネルギー」など,旧課程ではあまり深堀しなおかった受験生が多い分野もしっかりと学習しておくことが肝要です。また,所属している予備校が従来と変わりばえのない指導をしている場合,模擬試験では好調でも,実際の入試ではコケてしまう可能性がありますので,要注意です。

執筆者

本田哲生

医学部特訓塾代表。化学科講師。東京大学教育学部卒業。東京大学理科二類に在籍中の1992年から,杉並区阿佐ヶ谷の地で大学受験の専門塾を設立。30年以上,大学受験の指導を続けている。どうしようもないダメな生徒を自宅に下宿させ国立大学医学部に合格させたことを契機に,医学部受験指導を開始,医学部受験指導も23年に及ぶ。

2008年に小柏先生と共に医学部特訓塾を立ち上げ現在に至る。医学部と訓塾代表であり,同時に現場に立ち続ける化学講師でもある。

 

小柏裕義

医学部特訓塾塾長。数学科講師。東京理科大学理学部応用数学科卒業。学生時代から大学受験指導に携わり,2008年に本田先生と共に医学部特訓塾を立ち上げる。塾生が受ける医学部の入試問題を直前対策授業で毎年的中させるなど,入試問題の分析力には定評があり,医学部特訓塾の入試分析チームでは,設立当初からリーダーを務め続けている。数学が苦手な生徒でも,数学を得点源にさせてしまう小柏先生の作成するテキストは門外不出のアイテムとして,塾生の支持を得る。

 

池谷悠

医学部特訓塾英語科・国語科講師。上智大学経済学部経営学科卒業。学生時代から大学受験指導に携わり,現代文や英語という受験生の学力の根幹に関わる指導に従事。誰よりも面倒見の良い先生で,面接や小論文,志望理由書の作成など医学部特訓塾の塾生を手取り足取り面倒を見ているのはこの池谷先生である。そのため,近年の受験生がどういうことが得意でどういうことが苦手であるかなどに関しては,誰よりも造詣が深い。英語の指導に関しても「英語が得意でない生徒がいかに英語という試験で勝ち残るか」ということを考え,知識のある先生だからできるのではなく,受験生の知識量でいかに正解できるようになるのか,という視点で指導をするため,塾生からの信頼は絶大である。クールな見た目と異なり,熱血漢。